予防接種で健康被害が起こったときに支払われる給付金の額
国は、伝染の恐れがある疾病(病気)の発生、まん延などの防止の為に、対象者に対し 市町村を通して、ワクチンを接種する予防接種を講じることが出来ます。
予防接種は疾病の予防の為に接種するものですが、そのワクチンを接種したために健康被害が起こるもあり、その疾病や障害、又は死亡が予防接種によるものと厚生労働大臣が認めた時は 対象者に対して金銭の給付を行う救済措置があり、それらは予防接種法に定められています。
予防接種の対象となる疾病
都道府県、又は市町村が実施する予防接種の対象となる、厚生労働大臣が定める疾病は 結核、B型肝炎などの「A類疾病」、 インフルエンザなどの「B類疾病」、 その他に新型コロナウイルス感染症、新型インフルエンザなどの特例に分類されています。
A類疾病
- ジフテリア
- 百日咳
- 急性灰白髄炎
- 麻疹(はしか)
- 風疹
- 日本脳炎
- 破傷風
- 結核
- Hib感染症
- 肺炎球菌感染症(小児がかかるもの)
- ヒトパピローマウイルス感染症
- 痘瘡(とうそう)
- 水痘(水ぼうそう)
- B型肝炎
- ロタウイルス感染症
B類疾病
(定期、又は臨時などに区別されることがあります)
- インフルエンザ
- 肺炎球菌感染症(高齢者がかかるもの)
特例として該当する疾病
(臨時の予防接種)
- 新型インフルエンザ
- 新型コロナウイルス感染症
新型インフルエンザ予防接種による健康被害の救済に関する特別措置法 -- 第2章, 予防接種法 -- 附則 (第7条 - 新型コロナウイルス感染症に係る予防接種に関する特例)
給付の種類
予防接種を受けたために起きた健康被害に対する給付の種類は 「医療費」「医療手当」「障害児養育年金」「障害年金」「死亡一時金」「遺族年金」「遺族一時金」「葬祭料」です。
給付の申請をし、厚生労働大臣が認定した場合であって、以下に該当する人に対して支給されます。
医療費 及び医療手当
予防接種を受けたことによる 疾病について医療を受ける人
障害児養育年金
予防接種を受けたことにより 政令で定める程度の障害の状態にある十八歳未満の者を養育する人
障害年金
予防接種を受けたことにより 政令で定める程度の障害の状態にある十八歳以上の人
死亡一時金、遺族年金 又は遺族一時金
予防接種を受けたことにより 死亡した人の遺族
葬祭料
予防接種を受けたことにより 死亡した者の葬祭(葬儀)を行う人
給付金の額
予防接種による健康被害で支払われる給付金の額は、それぞれ給付の種類、疾病の分類、障害の等級などによって定められています。
医療費
医療費は下に挙げる治療に要した費用の額が支給されます。
- 診察
- 薬剤
- 手術などの医学的処置
- 自宅療養の管理や世話、看護
- 病院などへの入院
- 移送
流行性がある時期的な定期の(新型インフルエンザ感染症は除く)予防接種などのB類疾病の医療費は、病院などに入院が必要と認められる場合に支給されます。
また、A類疾病以外の場合は医療が行われた医療費の支払いが行われた時から5年を経過した時は請求をすることができません。
医療手当
医療手当は、月を単位として算出され、治療に要した医療の種類、日数に応じて支給されます。
治療日数 | 医療の種類 | 医療手当の支給額 |
---|---|---|
3日以上 | 診察、治療薬、医療措置、自宅療養など | 37,000円 |
3日未満 | 同上 | 35,000円 |
8日以上 | 入院や看護など | 37,000円 |
8日未満 | 同上 | 37,000円 |
* | 上記の医療を同時に受けた場合 | 37,000円 |
A類疾病以外の場合は 医療が行われた月の翌月の初日から5年を経過した時は請求をすることができません。
障害児養育年金
障害児養育年金の支給額は障害の等級によって区分され、 健康被害を受けた18歳未満の人を養育する人が対象です。 年金の給付は、毎年1月、4月、7月、10月の4期にかけて支払われます。
障害の状態に変更があり等級の変更がされた場合には、 それに応じた障害年金額が支給されます。
まん延の防止の為の緊急に接種する必要がある 臨時の予防接種により障害の状態になった場合
障害の等級 | 障害児養育年金の支給額(年) |
---|---|
1級 | 123万円 |
2級 | 98万8千円 |
臨時の予防接種以外の予防接種で障害にかかった場合
障害の等級 | 障害児養育年金の支給額(年) |
---|---|
1級 | 158万1600円 |
2級 | 126万6千円 |
厚生労働省が定める、医療型障害児入所施設に入所する場合に介護加算額として加算される場合
障害の等級 | 介護加算額の支給額 |
---|---|
1級 | 84万4300円 |
2級 | 56万2900円 |
障害年金
障害年金の支給額は、障害児養育年金と同様に障害の等級によって区分され、健康被害を受けた18歳以上の人が対象です。 年金の給付は、毎年1月、4月、7月、10月の4期にかけて支払われます。
障害児養育年金と同様に、障害の状態に変更があり、等級の変更がされた場合には、 それに応じた障害年金額が支給されます。
まん延の防止の為の緊急に接種する必要がある 臨時の予防接種により障害の状態になった場合
疾病の種類 | 障害の等級 | 障害年金の支給額(年) |
---|---|---|
A類疾病 | 1級 | 393万2400円 |
同上 | 2級 | 314万6400円 |
同上 | 3級 | 236万400円 |
B類疾病 | 1級 | 280万9200円 |
同上 | 2級 | 224万7600円 |
A類疾病で臨時の予防接種以外の予防接種で障害にかかった場合
障害の等級 | 障害年金の支給額(年) |
---|---|
1級 | 556万800円 |
2級 | 445万1200円 |
3級 | 334万800円 |
厚生労働省が定める、医療型障害児入所施設に入所する場合に介護加算額として加算される場合
障害の等級 | 介護加算額の支給額 |
---|---|
1級 | 84万4300円 |
2級 | 56万2900円 |
葬祭料
葬祭料は予防接種を受けたため死亡した人の遺族に対して葬儀の為に支払われるもので、 21万2千円が支給されます。
死亡一時金
死亡一時金はA類疾病、又はB類疾病の臨時の予防接種を受けたために死亡した人の遺族に対して支払われる給付金です。 主に「配偶者」や「子」などが給付を受け取る条件に該当し、 受け取る権利を有する人が2人以上いる場合は、それぞれの人数で割った額とされます。
死亡一時金の受け取り順位
- 配偶者(事実婚を含む)
- 子
- 父母
- 孫
- 祖父母
- 兄弟姉妹
疾病 | 該当 | 支給額 |
---|---|---|
臨時の予防接種 | 死亡した人の収入で生計を建てていた場合 | 3440万円 |
臨時の予防接種 | 死亡した人の収入で生計を建てていなかった場合 | 2580万円 |
同上ではない予防接種 | 4420万円 |
予防接種で死亡した人が、既に障害年金を支給されていた場合は、 それぞれの年数に応じて死亡一時金の受取れる額が下表の割合になります。
死亡するまでに障害年金を受け取っていた期間 | 死亡一時金を受け取れる額の割合 |
---|---|
1年未満 | 98% |
1年以上 3年未満 | 89% |
3年以上 5年未満 | 78% |
5年以上 7年未満 | 67% |
7年以上 9年未満 | 56% |
9年以上 11年未満 | 44% |
11年以上 13年未満 | 33% |
13年以上 15年未満 | 22% |
15年以上 17年未満 | 10% |
17年以上 | 5% |
遺族年金
遺族年金はB類疾病の定期の予防接種を受けたために死亡した人の死亡当時、 死亡した人の収入で生計を維持していた人の遺族に対して支給される年金で、 10年を限度として245万7600円が支払われます。
遺族年金の受け取り順位
- 配偶者(事実婚を含む)
- 子(胎児も含まれます)
- 父母
- 孫
- 祖父母
- 兄弟姉妹
遺族年金を受給できる同順位の遺族が二人以上いる場合は、その人数で割った額とされ、 受給できる遺族の数に増減が生じた場合は遺族年金の額が改定されます。
予防接種で死亡した人が既に障害年金を受給していた場合は、 10年から障害年金の支給を受けていた期間が控除された金額が限度として支給されます。
(7年を超えた期間の場合は7年と計算されます)
また、遺族年金は 死亡した人が医療手当、障害年金などの支給していた場合は、死亡から2年、 それ以外の場合は、死亡から5年を経過するまでに請求をしなければ支給されません。
遺族一時金
遺族一時金はB型疾病に係る定期の予防接種を受けた為に死亡した人の遺族が対象となる給付で、 737万2780円が支払われます。 受け取ることができる権利を有する人が2人以上いる場合は死亡一時金と同じ順位、割合になります。
遺族年金の支給を受けていた遺族が死亡した場合で、遺族一時金の支給額に満たない場合は、 遺族一時金の額から遺族年金の合計支給額を控除した額になります。
また、この請求は遺族年金を受けていた人が死亡してから2年を経過した時はすることができません。